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聞き込みは下見なしでは始まらない

尾行と張り込みの次に重要な探偵術、それが「聞き込み」です。聞き込みには、張り込み・尾行を繰り返したあとに初めて行なうのが鉄則です。聞き込みから調査を始めると、周囲の人に警戒心が起こり、張り込みがやりにくくなります。第一、訊いた人に顔を覚えられてしまいます。

さらに「直調」を避ける、という前提もあります。直調とは、調査対象者本人にじかに会って、調査内容そのものを聴くことです。もちろん、架空の話をつくったりして、本人に直接当たる例外もあるので「できるだけ直調を避ける」というのが適切でしょう。

実際の聞き込みでは、いきなり無造作に見ず知らずの人にあたることはありません。まずは、聞き込みに行く場所の下見から始めます。周囲の地理地形、環境、つまりは土地の性格を把握することです。

それによって、聞き込みに行く時間帯、服装などが決まります。さらに、張り込みと同様、相手に不審に思われず、正体を知らせないための架空のストーリーをつくっておきます。

下見の成功率は、依頼を受けたとき、いかに多くの情報を得られるかにかかっています。その情報を軽視すると、聞き込みはもちろん、尾行・張り込みの成功率も低くなります。

また、聞き込み調査が終了したら「裏付け」をとります。聞き込み調査で得られた情報は、すべて「未確認情報」です。これを「確認情報」にするために裏をとるのです。

 

 

ターゲットを遠巻きに外堀から攻める!

ここでは、結婚に関する調査における聞き込みを例にして話を進めることにしましょう。調査依頼者は夫となる男性の親。調査対象者は妻となる女性、仮にAさんとします。

こうした調査の眼目は、聞き込む対象者の家族構成を把握しておくことです。家族のなかで大学生がいれば、就職にまつわる架空のストーリーをつくり上げるのも一案です。

また、父親が名のある企業の社員なら、その方面からもストーリーはつくれます。調査依頼の段階で、何を重点的に調べればよいか、頭に入れておく必要があります。

架空のストーリーができあがったら、聞き込みに向かいます。対象は近隣の人たちですが、いきなりAさん宅の隣家を訪れにようなことはしません。やや遠巻きにして攻めていくのが常套手段です。

住宅地で一軒家であれば、半径200~300メートル外周にある家から聞き込みを始めるのが一般的です。そこからほぼ渦巻き状に、Aさん宅へ近づいていくのです。

外周のいちばん外側であっても、Aさんの家族についてストレートに聞くことはまずありません。2~3軒隣あたりの話を聞きながら「ところで、そのまた隣の家はどうでしたか?」というように、あくまでもこちらの興味対象はAさん宅にはない、という態度を装い会話を進める方法です。

そのように、遠巻きにして本人以外の情報を徐々に吸収していくと、その土地に詳しくなっていきます。ゆえに、いざ対象者に近づいたときも、聞き込みはスムーズにできるのです。

 

尾行の失敗はすなわち、探偵失格!

尾行の失敗は、なかなか表面にあらわれないものです。むろん、相手を見失った、あるいは尾行に気づかれた、というのは完全な失敗です。では、相手を見失わずに最後まで見届け、写真撮影などの証拠もしっかりおさえたら、それで尾行に成功したといえるでしょうか。

それは、探偵の仕事としては成功でも、尾行そのものは成功したとは言い難いのです。尾行術に則せば、失敗と同じです。問題は結果ではなく、その過程なのです。

たとえば、空いている電車内で尾行中の探偵が、少しでも相手から目を離したら、その時点で尾行は失敗、と言うことです。相手はたまたま同じ電車に乗り続けただけかもしれず、目を離した隙に降車した可能性は皆無とはいえないからです。

あるいは、ふとした拍子に、電車内で相手の真正面に出てしまったが、たまたま相手は眠っていたというケース。これなども、単に運がよかっただけなのです。そんなふうに運に頼った調査を続けていたら、いつか、相手を完全に見失う、その場で気づかれる、という大失敗を犯すはずです。

案外、そのあたりを履き違えた未熟な探偵は多いのです。場当たり的な、運だけに頼った営業も経営も長続きしないのと同じように、本来、運にまかせた調査などあってはいけないのです。

確かに、幸運も重要な要素ですが、大切なのは「必勝は平素の練磨から」という志です。極論すれば、尾行の失敗はすなわち、探偵としての失格を意味します。尾行の失敗は、他の探偵術の失敗よりも致命的なのです。

 

 

車はあくまで「箱」人から目を離すな!

タクシー、車の尾行は、どんな場合でも、車そのものに注意が行きがちです。そのため、思わぬ見落としをする探偵も少なくありません。たとえば、相手がタクシーを降りたのに気づかない、なんてことはよくあります。

タクシーに乗ったのだから、1区間くらいは必ず持っているだろうという先入観が失敗のもと。曲がった先が渋滞しているときなど、歩いたほうが早いかと思い直してすぐ降りる客はいくらでもいます。

釣りもレシートもいらない客であれば、ドアが開いて降りるまではあっという間です。しかも、降りた側から新たな客が乗れば、降りたようには見えないでしょう。

車は単なる移動手段にすぎません。尾行の対象はあくまでも、車のなかにいる人間。対象者がエレベーターに乗ったからといって、エレベーターだけを監視する探偵がいるでしょうか? しょせん、箱は箱です。そのことを忘れてしまうから凡ミスが起きるのです。

尾行の相手が新幹線などを利用して地方都市に向かい、その都市の私鉄や地下鉄などに乗ったらどうするか。さすがに、われわれも地方都市の鉄道事情までは熟知していません。ゆえに、初めての都市では行き当たりばったりです。しかし、とにかく相手から目を離さなければ何とかなるものです。